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XpengがLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを採用した車種を発表

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中国の新興EVメーカーのXpeng(小鵬)は、中国市場向けのLFP(リン酸鉄リチウム)を搭載した3つの車種について3月に発表した。顧客への納車は2021年5月に予定されている。

注目されるLFP(リン酸鉄リチウム)電池

LFP(リン酸鉄リチウム)電池は、リチウムイオン電池の一種で、正極材料にLFPを用いたものを指す。近年、急速に注目されており、テスラの中国製モデル3にはLFPバッテリーが搭載されている。従来の車載用バッテリーでは、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)が正極材として主流となっているが、高価なレアメタルであるコバルトを使うためコストが下げづらいことと、資源採掘国がコンゴ共和国などのカントリーリスクが高い国に偏っており、中長期的な供給不安が懸念されている。

そこで、1つのオプションとして期待されているのがLFP(リン酸鉄リチウム)となっている。LFPはコストパフォーマンスが高いと言われており、エネルギー密度はNMCほどに高くはないが、コストを低く抑えることができ、熱安定性が高い。

3車種でLFPを採用

今回XpengがLFPを搭載したのは、後輪駆動(RWD)であるP7のスタンダードモデルSmartP7、PremiumP7、そしてスーパーロングレンジのG3 460cの3車種である。P7においてスタンダードモデルとロングレンジモデルという2つのグレードを用意しており、ロングレンジでは引き続きNMC(NCMとも言われる)を利用している。

LFPとNMCの航続距離の差はおおよそ1.2倍となっており、LFPを搭載したP7スタンダードで、NEDCモード(※1)での航続距離は480kmとなっている。なお、このNEDCモードはやや航続距離の評価が甘く出てしまうため、実走行距離に近いEPA基準で換算すると、P7スタンダードで427kmとなる。

※1 NEDCモードは欧州で採用されている燃費評価基準で、やや古い基準となっている。現在は欧州では世界基準であるWLTPへの移行が進む。

P7におけるロングレンジとスタンダードの比較表

Xpengプレスリリースより筆者作成

上記の価格表を見るとわかるが、NMC→LFPバッテリに変えたことで、車の料金は2,000元(約33,500円)下げることができ、元々の料金に対して約9%程度の低価格化を実現している(※2)。

※2 上記の価格は補助金活用後の金額となっている。

今回、Xpengとしては「短距離の市街地走行は、中国のかなりの数の消費者にとっての主要なニーズの1つ」としており、価格を多少下げることで新しい顧客を開拓できることを見込んでいる。

一方で、今回LFP搭載モデルとNMC搭載モデルを比べてみると、車両重量はやや増加している。

(補足)車両重量の増加は、LFPバッテリの容量密度の低下を補うためにより多くのバッテリーを搭載した結果と見られるが、重量が増えたことによる航続距離への影響はやや不明。

また、上記の2車種に加えて、XpengはLFP搭載バッテリーを搭載した新しいG3 460cバージョンも発売する。このG3はコンパクトSUVで、新しいモデルはNEDC 460kmのP7と同様の航続距離を持ち、価格はRMB149,800(補助金後)で低抗力ホイールを備えている。このG3は2021年4月から納車が開始する。

(今回参考のプレスリリースはこちら


ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像を知りたい方はこちら。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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