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VITURE、XRウェアラブル向けスマートグラス開発で1億ドルを調達

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米国拠点のXRウェアラブル企業 VITURE(ヴィチュア) は、軽量スマートグラス「VITURE One」などを展開し、ディスプレイ・AI・通信を融合した次世代ウェアラブルプラットフォームの構築を進めている。独自の型光学設計により、薄型筐体で高輝度・高解像度を実現し、映像視聴から生産性用途までカバーする“日常装着型XRデバイス”として注目されている。 

2025年10月、同社はシリーズBラウンドで 1億ドル(約150億円) を調達。主導は BAI Capital と BlueRun Ventures で、Singtel Innov8 など既存投資家も参加した。これにより累計調達額は 約1億2,000万ドル に到達。 資金はグローバル展開、AI搭載型スマートグラスの新製品開発、製造強化に充てられる予定で、2026年にかけてAIアシスタント統合モデルの投入を計画している。

軽量・高輝度を両立する次世代XRディスプレイ構造

VITUREは独自の光学設計を採用し、薄型構造で高輝度・高解像度の映像表示を実現している。光路を短縮しつつ広い視野を確保できるため、装着感と没入感の両立が可能だ。ディスプレイには最大4,000nits・120Hz駆動のマイクロOLEDを搭載し、屋外環境でも高い視認性を維持。小型化と高輝度化を両立させ、日常的に使用できるXR体験を目指している。

レンズには電気クロミック技術を組み込み、透過率を自動的に調整することで明暗環境を問わず快適な視認性を確保する。また、近視補正機能を内蔵し、度付きレンズを不要とした。本体と処理ユニットを分離する構造を採用し、軽量化と発熱抑制を両立。ネックバンド型モジュールが電源と演算処理を担い、長時間使用時の快適性を高めている。

視覚体験から空間体験へ

2025年7月、同社は次世代モデル群「Lumaシリーズ」を発表した。Luma、Luma Pro、Luma Ultra、そして上位機種「Beast」を含む4モデル構成で、ソニー製マイクロOLEDを採用。コントラストと歪みを改善し、約50%のシャープネス向上を実現したという。価格帯は399〜599ドルで、Beastは10月出荷予定。視認性と装着感を高め、XRグラス市場の本格普及を見据えた展開となっている。

共同創業者のEmily Wang氏は「シャープさは数値ではなく体験だ」と述べ、光学設計を1年以上かけて見直した経緯を語る。また「透明性は信頼を築く」として、複数モデルを同時に公開したのはユーザーに対する誠実さの表れだと説明。CEOのDavid Jiang氏は上位モデル「Beast」について「最大視野と没入感を備え、画面を空間に固定できる」とし、AIによる2D映像の3Dレイヤー化機能にも言及している。

こうした展開は、同社が“映像を拡張するデバイス”から“空間を体験するプラットフォーム”へと進化する方向性を示している。モーショントラッキングやジェスチャー対応、3Dレイヤー合成などの技術を軸に、より自然な空間表現と操作性の実現を目指す姿勢が伺える。同社は今後も既存機能を拡張しながら、AIとハードウェアを融合させた継続的イノベーションを推進していくだろう。


参考文献:
※1:XR Glasses Maker VITURE Secures $100M Investment as Wearable Segment Heats Up(リンク

※2:XR’s Quiet Giant: A Conversation with Vitureリンク

※3:同社公式HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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