住宅建設AIを開発するHigharcが9,500万ドル調達 設計から見積・施工までを空間データで統合へ
Higharcは、住宅建設向けAIプラットフォームを開発する米国の企業である。2018年、Marc Minor氏が自身の住宅建設で感じた設計・施工プロセスの非効率をきっかけに創業した。その後、Autodeskで建築・建設向けAIに携わったMichael Bergin氏、BIM向け生成設計システム「Dynamo」の開発に関わったPeter Boyer氏、ゲーム業界でビジュアル制作を担ってきたThomas Holt氏が共同創業者として参画した。
同社は今回、Insight Partners主導で9,500万ドルのSeries Cを調達した。累計調達額は1億7,000万ドル超となる。Wellington Managementのほか、Fifth Wall、Spark Capital、Lux Capital、SE Venturesなど既存投資家も参加した。あわせて、米国最大の非上場建材ディストリビューターであるUS LBMとの提携も発表している。
住宅建設AIは、図面作成から施工データの統合へ
今回のポイントは、住宅建設AIの役割が、図面や3Dイメージを作ることから、実際の設計・見積・許認可・施工に使えるデータを整えることへ広がっている点である。Higharcは、住宅を構造化された空間データとして扱い、設計、見積、販売、施工図書の作成を一体で支援するプラットフォームを提供している。
住宅建設では、設計変更、購入者による仕様選択、区画ごとの条件、見積、施工図書が別々のツールで管理されることが多い。そのため、ひとつの変更を複数の資料に反映する必要があり、見積のずれや図面の不整合、現場での手戻りにつながりやすい。同社のHomebuilding Cloudは、設計、見積、販売、施工を同じデータ基盤でつなぎ、プランや仕様の変更を関連資料に反映できるようにする。
同社が重視しているのは、AIで見た目のよい図面を作ることではなく、住宅建設の実務に耐えるデータを生成することである。住宅は実際に建てられる必要があり、見積は正確で一貫していなければならず、許認可に使う図面には精度と法規制への適合が求められる。Higharcは、幾何制約、施工ルール、BIMデータ、下流工程との整合性を組み込むことで、設計から施工まで使える建設AIを目指している。
住宅データを一元管理し、設計・見積・施工をつなぐAI基盤
同社の中核は、住宅を静的な2D図面ではなく、BIMネイティブな空間データとして扱う点にある。同社のプラットフォームでは、設計、見積、販売、施工図書を1つの住宅モデルで管理する。プランや仕様が変わると、3Dモデル、資材数量、コスト、施工文書が更新されるため、複数のCADファイルや見積表を個別に修正する手間を減らせる。
見積領域では、住宅プランと製品データをもとに、主要寸法やコストを自動算出する。今回発表したAI Estimatingでは、2Dのプランセットを取り込み、AutoTranslate AIが間取り画像を3D空間データモデルへ変換する。そこに独自のAIビジョンモデルと施工ロジックを組み合わせ、購入可能な資材にひもづく見積もりを生成する。
同社の技術ブログでは、Generative Building Model(GBM)も説明されている。GBMは、部屋を画像としてではなく、壁、開口部、部屋タイプ、家具、設備などの構造化トークンとして扱う。これにより、Transformerが建築的な構成パターンを学習し、幾何制約やトポロジーを保ったレイアウト生成を目指す。完全自動設計ではなく、住宅建設の実務に使えるデータを整える技術といえる。
住宅建設データを資材調達までつなぐ
同社は調達資金を、AI製品開発の拡大と、住宅建設市場のより広い領域への展開に充てる。CEO兼共同創業者のMarc Minor氏は、次の段階ではAI機能を深め、建設会社がすでに使うシステムにサプライヤーも接続すると説明している。
その中で重要になるのが、米国の大手建材ディストリビューターであるUS LBMとの提携である。US LBMは、住宅会社や専門工事業者向けに木材、窓、ドア、屋根材、外装材などを供給している。Higharcはこの提携を通じて、設計・見積データを資材調達の領域まで広げようとしている。
US LBMのJonathan Greene氏は、2D図面を精密で動的な3Dデータモデルへ変換できる点を評価し、見積、資材計画、住宅販売、顧客連携の迅速化につながると述べた。Insight PartnersのJosh Fredberg氏も、HigharcがAI時代の住宅設計・許認可・建設の標準を作りつつあると評価している。
参考文献:
※1:Higharc Raises $95M Series C to Scale AI for Homebuilding( リンク)
※2:同社HP( リンク)
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