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Stathera、5,500万ドル調達 AIデータセンターの同期を支えるシリコンタイミング技術を量産へ

Statheraは、カナダ・モントリオールに本社を置く半導体スタートアップである。同社は、電子機器の中で「正確なリズム」を作るタイミング半導体を開発している。スマートフォン、ウェアラブル、IoT機器、AIデータセンターなどでは、内部の部品が同じタイミングで動く必要がある。同社は、その基準信号を作る部品を、従来の水晶部品からシリコンベースの半導体へ置き換えようとしている。

今回同社は、5,500万ドルのSeries B資金調達を発表した。ラウンドはMaverick Siliconが主導し、Celesta Capital、BDC Capital、MediaTek Innovation Fund、TXC Corporation、Ultratech Capital Partnersが参加した。累計調達額は7,500万ドルとなる。調達資金は、既存製品の量産、AIデータセンター向け次世代製品の開発、シリコンバレー拠点の設立に充てる。

AIインフラに欠かせない「時間をそろえる」技術

AIデータセンターでは、GPUやサーバー、ネットワーク機器が大量につながって動いている。これらの機器は、それぞれが高速に計算し、データをやり取りする。しかし、機器同士の動作タイミングが少しでもずれると、データの受け渡しに遅れや乱れが生じる。AIインフラでは、演算能力だけでなく、システム全体を同じリズムで動かす技術も重要になる。

Statheraが手がけるのは、この「時間をそろえる」ための半導体部品である。CEO兼共同創業者のGeorge Xereas氏は、AIによってタイミング部品が単なる小さな部品ではなく、重要インフラになったと説明している。AIデータセンターの性能は、計算能力だけでなく、数万個のプロセッサやネットワークの間でデータをどれだけ速く、正確に同期できるかにも左右されるという。

今回の調達は、AIインフラを支える技術の裾野が広がっていることを示している。これまで注目されてきたのはGPU、メモリ、電力、冷却などだった。一方で、同社のようなタイミング半導体は、そうした部品が正しく連携するための土台になる。派手な演算チップではないが、AIデータセンターの性能を引き出すうえで欠かせない領域である。

水晶部品をシリコン半導体へ置き換える

電子機器には、内部の部品を同じテンポで動かすための基準信号が必要である。これまでは主に、水晶を使った発振器がその役割を担ってきた。水晶は安定した振動を生み出せるため、時計、スマートフォン、通信機器など幅広い製品に使われている。

同社が開発するのは、この時間の基準をシリコン上の微細構造で作るMEMS発振器である。特徴は、独自のDualModeアーキテクチャにより、1つのMEMS共振器から低周波と高周波の2種類の信号を同時に生成できる点にある。これにより、複数の水晶部品を1つの小型部品にまとめ、基板面積、部品点数、消費電力の削減を狙う。発表によれば、標準的な水晶パッケージと比べて最大85%小型化でき、衝撃や振動にも強いとしている。

この技術は、スマートフォンやウェアラブルのように小型化が求められる機器だけでなく、AIデータセンターにも展開される。AIデータセンターでは、GPUクラスター、スイッチ、ネットワーク機器、光インターコネクトが高速に連携するため、各機器の時間軸を正確にそろえることが重要になる。同社は、こうした用途に向けてAI、通信、エンタープライズ、データセンター向けの次世代プラットフォームを開発する計画である。

量産化とAIデータセンター展開が焦点

同社は今回の資金を使い、GEN2と呼ぶ既存のタイミング製品群を量産段階へ進めるとともに、AIデータセンター向けのGEN3プラットフォーム開発にも着手する。最初の顧客向けサンプル提供は2028年を目指しており、発表ではAIデータセンター向けの時間同期市場だけで、2030年までに累計15億ドル規模の機会があるとの見通しも示された。

Maverick SiliconのJosh Miner氏は、現代のAI・エッジインフラでは、サイズ、電力、安定性に加え、大規模な同期への要求が高まっていると指摘する。そのうえで、MEMSベースのタイミング技術は、集積性、耐久性、プログラム可能性の面で従来とは異なるアプローチを提供すると説明した。

今後の焦点は、同社の技術がモバイルやIoT向けの小型部品にとどまらず、AIデータセンターの厳しい同期要求に対応できるかである。AIインフラの競争はGPUの性能だけでは決まらず、電力、冷却、ネットワーク、そして時間をそろえる半導体部品まで含めて、システム全体をいかに安定して動かせるかが重要になっている。


参考文献:

※1:Stathera Announces US$55 Million Series B to Scale Silicon Timing and Accelerate Next-Generation AI Data Center Solutions( リンク

※2:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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