商用核融合技術のProxima Fusion社が4億1100万ユーロを調達、Googleも戦略投資家として参画
Proxima Fusionは、ドイツ・ミュンヘンを拠点とする核融合スタートアップである。同社は、核融合研究機関Max Planck Institute for Plasma Physics(IPP)から初めてスピンアウトした企業であり、商用核融合発電所の開発を進めている。
同社は、プラズマを安定して閉じ込めやすいように磁場形状を最適化したステラレーター方式と、高温超電導磁石を組み合わせる点に特徴がある。IPPは、ドイツ・グライフスヴァルトで世界最先端級のステラレーター実験装置「Wendelstein 7-X」を運用しており、同社はその研究成果をもとに商用化を目指す。
今回同社は、4億1,100万ユーロの資金調達を発表した。ラウンドはXTX VenturesとEast X Venturesが主導し、RWEとGoogleが戦略投資家として参加した。KfW Capital、SPRIND、Burda Principal Investmentsに加え、既存投資家も参加している。評価額は24億ユーロとなり、同社は欧州で最も資金を集めた核融合企業になった。
欧州における商用核融合開発の中核企業へ
当社メディアでは2025年7月、Proxima FusionがシリーズAで1億3,000万ユーロを調達し、ステラレーターモデルコイルの製造と2031年の稼働開始を目指す動きを取り上げた。当時の焦点は、独自のステラレーター設計を示したことにより、核融合を実験室ベースの科学から産業規模のエンジニアリングへ移そうとしている点にあった。
今回の調達は、その延長線上で、同社を欧州の商用核融合企業として一段引き上げるものといえる。同社は今回の発表で、欧州で過去最大の核融合投資であり、欧州技術企業への民間投資としても大規模な案件の一つだとしている。核融合は、エネルギー安全保障、産業競争力、脱炭素電源を同時にめぐる戦略技術として扱われ始めている。
特に重要なのは、RWEとGoogleが戦略投資家として参加した点である。RWEはバイエルン州の旧原子力発電所跡地で、同社と初のステラレーター型核融合発電所の建設に向けた協業を進めている。Googleの参加も、核融合を長期的な安定・ゼロカーボン電源として見る需要側の関心を示している。研究開発企業としての同社は、発電所建設を見据えた産業プロジェクトへ移行しつつある。
高温超電導磁石でステラレーターを小型化する
同社の中核技術は、ステラレーター方式と高温超電導磁石を組み合わせる点にある。ステラレーターは、外部コイルで作る磁場によって高温プラズマを閉じ込める核融合方式の一つで、連続運転に向くとされる。
一方で、外部コイルの形状は複雑になりやすく、設計と製造の難しさが課題だった。同社は、クラウドベースの最適化設計基盤「StarFinder」を用い、プラズマを安定して閉じ込める装置構造を高速に検証している。
同設計は、トロイダル方向のプラズマ電流を実質的にゼロにできる点に特徴がある。これにより、トカマクなどで課題となる電流起因の不安定性やディスラプションのリスクを抑え、安定した連続運転を目指す。
もう一つの柱が高温超電導磁石である。高温超電導材料は、従来材料より高い温度や強い磁場で使いやすく、核融合装置の設計自由度を広げる。同社は今回の資金を、ステラレーターモデルコイルの完成や高温超電導ケーブル・磁石の生産拡大に充てるとしている。
Alphaから商用発電所Stellarisへ
今後の焦点は、同社が「Alpha」と呼ぶ正味エネルギー実証機を計画通り進められるかである。Alphaはミュンヘン近郊に建設予定のステラレーター実証機であり、商用化に向けた橋渡しに位置づけられる。
同社は、バイエルン州、Max Planck Institute for Plasma Physics、RWEと連携し、2030年代前半の実証を目指す。RWEの参画は、研究機関発の技術を実際の電力インフラへ接続するうえで重要な意味を持つ。
CEO兼共同創業者のFrancesco Sciortino氏は、欧州は米国や中国と最初の核融合発電所をめぐって競争しており、今回の調達は欧州が世界的に競争力のある企業を作れることを示すものだと述べている。
同社はAlphaで主要技術を検証した後、2030年代後半に商用ステラレーター核融合発電所「Stellaris」の実現を目指す。大型調達は、欧州が核融合を研究テーマではなく、エネルギー安全保障と産業競争力を担うインフラ技術として育てようとしていることを示している。
参考文献:
※1:Proxima Fusion Raises €411 Million to Build Europe’s Commercial Fusion Champion( リンク)
※2:Proxima Fusion, RWE, the Free State of Bavaria and Max Planck Institute for Plasma Physics sign agreement to build the world’s first commercial fusion power plant in Europe( リンク)
※3:弊社記事「ドイツの核融合スタートアップ、Proxima FusionがシリーズAで214億円を調達。2031年の稼働開始目指す。」( リンク)
※4:同社HP( リンク)
【世界の核融合技術の動向調査やコンサルティングに興味がある方】
世界の核融合技術の業界動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。
先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら
CONTACT
お問い合わせ・ご相談はこちら