AI活用の在宅睡眠検査を開発するサンライズグループが2900万ドルを調達

Sunrise Group はベルギー発の睡眠テック企業で、顎運動センサーと AI を活用した在宅睡眠検査を開発。 2024 年に「Dreem Health」を買収し、診断から治療までを統合したデジタル睡眠クリニックを展開。 FDA 認証済みデバイスと遠隔診療を組み合わせ、専門医不足という社会課題に応えている。
2025 年 9 月、同社はシリーズ A で 2,900 万ドルを調達。 ラウンドは Eurazeo が主導し、Amazon Alexa Fund など複数投資家が参加。 資金は全米展開、AI 研究開発、収益化に向けた事業基盤強化に充てられる予定だ。
米国では睡眠障害に悩む患者が増加している一方で、睡眠専門医は圧倒的に不足しており、検査や診断に数か月を要することも多い。従来の睡眠検査は高額かつ施設依存で、患者が手軽にアクセスできる医療体制は整っていない。その結果、多くの人々が適切な診断や治療を受けられず、生活の質の低下につながっている。
同社はこの状況を「医療アクセスの構造的課題」と捉え、在宅検査と遠隔診療を組み合わせた新しい枠組みを構築。買収した「Dreem Health」を基盤に、医師ネットワークや診療データを統合し、分散していた睡眠ケアを一元的に提供するプラットフォームを整備している。こうして、これまで高コスト・低アクセスだった睡眠医療を、日常的に利用可能なケアへと変革しようとしている。
下顎運動センサー技術を核に、在宅睡眠検査がFDA認可を取得
同社の装置は、睡眠中の下顎運動を計測する小型センサーを用いる。顎の動きは気道の閉塞や呼吸努力と関連し、その変化を解析して睡眠時無呼吸症候群(OSA)の兆候を推定できる。従来の PSG(ポリソムノグラフィー:脳波や呼吸など多数の生体信号を測定する施設依存型検査)は高負担だが、本装置は在宅で簡便に利用でき、患者の負担を大幅に軽減する。
取得した下顎運動データは AI により解析され、呼吸イベントの有無や睡眠障害リスクが推定される。解析は自動化され、医師は診断の補助情報として活用可能だ。これにより診断効率と精度が向上するが、PSG を完全に代替するのではなく「診断支援」として位置づけられている。家庭での利用と医師の判断をつなぐ仕組みである。
FDA は本装置を De Novo 承認 という制度で認可した。これは既存に分類がない新しい医療機器を対象に行われるプロセスで、リスクが中程度と判断された機器に適用される。承認ではアルゴリズム性能の検証に加え、ソフトウェアやセンサー不良への対応、安全性試験が義務化された。これにより在宅睡眠検査という新たなカテゴリーが確立され、臨床利用に耐える信頼性が裏付けられた。
保険対応と医師ネットワークを軸にした全米展開
今回の資金調達で、Sunrise Group はデジタル睡眠クリニック Dreem Health の全米展開をさらに加速させる構えだ。
同社はすでに米国内 49州 でサービスを展開し、UnitedHealthcare、Aetna、Medicare といった大手保険からの適用も得ている。調達資金は、診断・治療アクセスの拡大、保険対応の強化、そしてサービス基盤のさらなる拡充に投じられる予定だ。
創業者兼 CEO の Laurent Martinot 氏は「トラッカーだけでは問題は解決できない。テクノロジーがケアとつながるときにこそ真の進歩がある」と強調する。この姿勢は、デバイス中心の“モニタリング”から一歩進み、診断から治療までを一体化させるケアモデルを志向していることを示す。日本においても睡眠医療へのアクセス不足は共通課題であり、同社のアプローチは今後の医療提供モデルに示唆を与える。
参考文献:
※1:Sleep tech startup Sunrise Group raises $29M( リンク)
※2:同社公式HP(リンク)
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