ニュース記事

カビからの健康被害を守るMoldCoが800万ドルの資金調達を発表

INDEX目次

MoldCo は、米国発のヘルステック企業である。 同社は「モールドデトックスを予防医療として標準化する」というビジョンを掲げ、カビや環境毒素による健康被害に取り組んでいる。オンライン診療を軸に、99ドルから利用可能なバイオマーカー検査や、月額150〜300ドルでの治療プログラムを提供し、誰もがアクセスできる形での診断・ケア体制を構築中だ。現在は46州で検査を展開し、一部州では診療も開始。将来的には全米規模での提供を目指している。 

2025年9月、同社はシード資金として800万ドルを調達した。 ラウンドは Cantos と Collaborative Fund が主導し、累計調達額は1,100万ドルに達した。今回の資金は、診断・治療プラットフォームの強化、臨床データ基盤の拡充、そして予防医療市場での普及推進に活用される予定である。

カビ被害を公衆衛生課題として捉える

米国では住宅の約50%が湿気や水害によるカビ被害を経験するとされるが、医療現場での診断・治療は体系化されていない。患者の多くは原因不明の慢性的な不調に悩まされ、既存の治療は月数千ドル単位の高額費用がかかることもある。結果として、多くの人々が適切なケアにアクセスできず、環境要因による健康課題は放置されがちである。

同社はこの状況を「環境要因に由来する公衆衛生課題」と捉え、予防医療の枠組みに組み込むことを目指している。資金調達によって医師ネットワークや臨床データ基盤を拡充し、分散していたケアを統合可能なプラットフォームとして整備。従来は見過ごされてきた領域を、日常的に管理可能な健康課題へと変える戦略を打ち出している。

検査から治療まで一貫したMoldCoの仕組み

カビが産生するバイオトキシンは慢性的な炎症や神経・ホルモン機能の障害を引き起こす可能性があり、疲労や頭痛、呼吸器症状、集中力低下など多岐にわたる健康問題を誘発する。

同社は、こうしたリスクを正しく理解し、家庭での検査や無料の質問票を通じて早期に可視化する仕組みを提供。さらに専門医による診断と検査結果を結びつけることで、従来見過ごされがちだったカビ毒性への対応を予防医療の枠組みに統合しようとしている。

遠隔医療プラットフォームでは、患者が自身の症状を把握し、オンラインで専門医にアクセスし、3つのステップで治療を自宅に届けられる仕組みを備えている。

  • オンデマンドの専門家ケア:認定を受けたカビ毒性専門医に直接アクセスでき、地理的制約や長い待機時間を解消。

  • 高度なラボテスト:99ドルから利用可能なバイオマーカー検査を、教育コンテンツとセットで提供。

  • 証拠に基づく治療:処方箋強度の結合剤や標的ペプチド、複合療法が直接自宅に発送される。

  • 統合的なケアナビゲーション:専任ナビゲーターが24時間365日体制でサポートし、治療プロトコルの実行や進捗管理を支援。

2026年までに全米展開を目指す

今回のシード資金調達により、同社は診療ネットワークと臨床基盤の拡充を加速させる構えだ。現在46州で提供している検査を足がかりに、2026年までに全米での診療展開を目指す。専任医師ネットワークや臨床データ基盤を強化し、患者導入から治療提供までのプロセスをスケールさせる計画である。さらに、臨床研究機関との提携も進める。

創業者兼CEOの アリアナ・サッカー氏 は次のように語る。 「カビ病と闘いながら、従来の医療の混乱と軽視を乗り越えてきた私の道のりは、孤独とフラストレーションに満ちていました。この経験から、必要な専門知識が広く届いていないという重大なギャップが明らかになったのです。同社は臨床知識と遠隔医療を組み合わせ、誰もが迅速かつ低コストでエビデンスに基づいたケアを受けられる仕組みを提供します」

さらに、バイオトキシン疾患分野の第一人者である リッチー・シューメーカー博士 もこう強調する。
「水害を受けた建物に見られる環境要因が健康や免疫に与える深刻な影響は、数十年前から記録されてきました。30年近い研究から確立されたエビデンスに基づく治療プロトコルは、今や MoldCo を通じて患者に提供可能になっているのです」



参考文献:
※1:MoldCo Raises $8M to Address Mold & Environmental Toxins Health Crisis, Standardize Mold Detox as Routine Preventative Care(リンク

※2:同社公式HPリンク



【世界のデジタルヘルスケアの技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界のデジタルヘルスケアの技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら







  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら