有線ドローンを開発するHoverfly TechnologiesはシリーズBで2,000万ドルを調達

Hoverfly Technologies は、米フロリダ州オーランドを拠点とする有線ドローン(地上電源と有線で繋がっているドローン)の開発企業。地上電源と有線通信を活用する独自技術により、長時間の安定飛行とリアルタイム通信を実現している。監視、防衛、通信などデュアルユース領域での活用を想定し、主力機「Sentry」「Spectre」に続く次世代モデル「NEXUS」の開発を進めている。
2025年10月、同社はシリーズBラウンドで 2,000万ドルを調達。リード投資家は既存パートナーの Leonardo DRS(レオナルドDRS) で、追加出資として韓国の Korea Robot Manufacturing(KRM) も参加。資金は米国内での製造能力強化、供給網拡充、次世代通信機能の実装、ならびに国防用途での展開拡大に充てられる予定で、Hoverfly は開発段階から量産・運用フェーズへの移行を加速させる計画。
災害現場等で長時間連続飛行できるドローンを開発
現在の防衛・監視用途ドローン市場では、運用時間の制限・通信途絶リスク・電源管理の複雑さ が大きな課題となっている。特に長時間監視や災害対応など、高信頼かつ継続的な運用 が求められる場面では、バッテリー駆動の一般的なドローンでは対応が難しい。また、電波干渉・安全基準・サイバーセキュリティ などの要件も年々厳格化しており、実運用に必要な制度的整備も進行中である。
こうした課題に対し、同社は地上電源と有線通信を組み合わせた有線ドローンで解決を図る。常時給電により長時間の連続飛行を実現し、通信の安定性とデータセキュリティを確保。さらに、ネットワーク拡張機能「NEXUS」を通じて複数無人機を統合運用し、監視網の効率化と状況認識能力の強化を目指している。
電力と通信を一本化し、長時間運用と高信頼通信を両立
同社のドローンは地上電源からの有線給電により、理論上無制限の飛行を実現している。バッテリー交換を必要とせず、24時間以上の監視や通信任務にも対応可能。電力供給と通信を一本化したケーブル構造で、高い安定性と安全性を両立している。
有線データリンクによって電波干渉や傍受リスクを抑え、暗号化通信により防衛・災害対応など高セキュリティな運用を可能にする。携行性にも優れ、現場での展開は10分以内。過酷環境やGPSが不安定な地域でも安定して運用できる。
機体はペイロード非依存のモジュラー設計で、監視カメラや通信中継装置など任務に応じた装備変更が可能。さらにNEXUS機能により複数機を連携させ、広域監視や通信ネットワークの拡張を実現。次世代C4ISR基盤としての発展も期待されている。
米国内製造とサプライチェーンを強化し、政府・防衛機関との協働体制を拡張
同社CEO、Adam Goodrich氏は「今回の資金調達で米国内製造とサプライチェーンをさらに強化し、政府・防衛機関との協働体制を拡張する」と述べた。今後はテザードUASの標準化や自動制御技術の向上にも注力し、長時間監視任務の完全自律運用を目指すという。
同氏はまた「NEXUSによるネットワーク化は、単なる通信中継を超えた“空中基盤”の形成を可能にする」と強調。複数ドローンの統合運用で災害対応や国境警備など広域ミッションへの即応力を高め、将来的には国際市場への展開も視野に入れると語った。
同社の取り組みは、単に長時間飛行を実現する技術革新にとどまらず、「地上と空を一体化した通信・監視インフラ」の形成という新たな方向を示している。米国防分野における信頼性重視の潮流や、災害対策・重要インフラ監視への需要拡大を背景に、同社のモデルは他国でも応用される可能性がある。有線型という“制約”を武器に変えたアプローチは、無人機運用の現実解の一つになるかもしれない。
参考文献:
※1:Hoverfly Technologies Secures $20 Million Series B Investment to Accelerate Growth and Strengthen U.S. Drone Capabilities( リンク)
※2:同社公式HP(リンク)
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