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地熱発電のEavor Technologiesが93億円を資金調達。投資家はカナダ政府出資の独立系ファンド

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カナダの地熱発電スタートアップであるEavor Technologiesは2025年6月3日、Canada Growth Fund(CGF)より8900万カナダドル(約93億円)の資金調達を行ったと発表した。

Eavorは2017年設立で、カナダ・アルバータ州カルガリーに本社を置く。他、アルバータ州内と米国に実証施設を有し、ドイツに商業発電施設を建設中。日本にも拠点がある。

ドイツの施設建設では新たな掘削方法を採用

Eavorについて、2024年10月に特集を組んだ。

参考記事:Eavor Technologiesの地熱発電技術と事業化の動向|北米、欧州、日本で展開

従来の地熱発電は、湧水のエネルギーを使って発電するものだった。一方、Eavorはそうではなく、閉じられたループを地下に構築し、その中で流体を循環させる。そして、流体が地下で熱を回収し、地上の設備で電気に変換する仕組みだ。

前述の通り、ドイツでは商業発電プロジェクトが進行しており、施設が建設中。この建設において、新たな掘削方法を確立したと、2025年5月に発表があった。

これまで地下で水平方向の掘削を行う場合、掘る場所の正確性を期すために電線を敷設していた。地上と地下との間で通信を行い、正しい場所を掘れているか確認するものである。当然、ワイヤーは相応の長さが必要になり、敷設の時間、アライメント(精度の確認)の時間も必要となる。

Eavorが導入した新方式は、端的にいえば磁気測距によって時間短縮を図るものだ。磁気測距を用いながら、約100メートル間隔の2本の坑井を掘削。最終的にこの2本をつなぎ、閉ループを完成させる。新方式は「Eavor-Link Active Magnetic Ranging(AMR)システム」と名付けられた。

Eavor-Link AMRを広報するプレスリリースでは「これまで数時間から数日かかっていたプロセスをわずか数分で完了できるようになる」と説明。これは、アライメントでかかる時間のことなのだろう。もちろん、掘削の全体的なプロセスはさらに時間がかかるわけだが、たしかに数日〜数週間単位の工期短縮にはつながりそうだ。

また、2025年2月にはEavorの閉ループ方式がNHKに取り上げられたことも、ウェブサイトでアピールしている。

国内での技術継承が目的

今回、Eavorに投資したCGFは、カナダ政府が資金を拠出する独立系ファンド。投資において、Eavorにはマイルストーンが設定され、それを達成するとさらに4800万カナダドル(約50億円)を出資するという。

今回の資金調達は、Eavorがカナダにとどまり続けながら、国内で技術を継承していくことが目的だ。

EavorのJohn Redfern共同創業者兼CEOは、次のようにコメントした。

「EavorへのCGFの継続的なコミットメントに感謝している。Eavorは、これまで開発と技術において重要なマイルストーンを達成してきた。今後、数カ月にわたり、さらに進歩していきたい」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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