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汎用ロボット開発のDyna Robotics がNVIDIA, Amazon, Salesforce等からの支援を受けシリーズAで1億 2,000 万ドルを調達

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Dyna Robotics は、2023年に米国で創業されたロボティクス企業だ。AIの基盤モデルをロボット制御に応用し、清掃や配膳など多様な業務に対応できる汎用ロボットを開発している。発表した「DYNA-1」は24時間連続稼働で成功率99%以上を達成し、ホテルやレストランなどで実用化が進む。

2025年9月16日、同社はシリーズAラウンドで1億2,000万ドルを調達した。Robostrategy が主導し、CRV、Salesforce Ventures、NVentures、Amazon Industrial Innovation Fund などが参加。資金は研究開発と商用展開の拡大に充てられ、「物理世界における汎用人工知能(Physical AGI)」の実現を目指している。

AI基盤を用いた汎用ロボットを開発

ロボット産業では、従来の開発がタスクごとに専用設計されるため、導入コストが高く、環境が変わるたびに再学習や再設計が必要となるという課題を抱えていた。その結果、清掃や配膳など限られた用途には対応できても、汎用的な業務には適応できず、商用利用の拡大に制約があった。さらに近年は、人手不足やサービス業の自動化ニーズが急速に高まっており、既存のロボット開発サイクルでは需要に応えきれない状況となっていた。

同社はこの課題に対し、AIの基盤モデルを応用した「汎用ロボット基盤」というアプローチを採用した。環境やタスクが変わっても共通のモデルで適応できる設計とし、24時間稼働でも99%を超える成功率を実現。さらに商用施設での実証を通じ、清掃から接客支援まで幅広いタスクに対応可能な柔軟性を示している。これにより、顧客は導入コストを抑えながら多用途で利用でき、人手不足の現場における迅速な自動化を可能にしている。

Physical AGI実現を支える三つの技術要素

Dyna Robotics の中心技術は、AI基盤モデルを応用したロボット「DYNA-1」にある。視覚認識から運動制御までを統合的に学習することで、従来の専用設計ロボットでは難しかった未知環境への適応を実現。ホテルやレストランなど多様な現場で実証され、24時間稼働で成功率99%以上を記録している。 

同社の技術は三つの柱にまとめられる。まず基盤モデルによる汎用性で、環境やタスクが変わっても最小限の学習で幅広い業務に対応できる。次にクラウド接続による進化の持続性があり、ロボット群のデータを共通フォーマットで収集・解析し、リモート更新で性能を高められる。さらにモジュール設計による拡張性により、新たなセンサーや機能を柔軟に追加し、多様な現場への適応を可能にしている。

これらの要素により、Dyna Robotics は「物理世界における汎用人工知能(Physical AGI)」の実現に向けて、研究段階から商用展開へと一歩踏み出している。

本格的な市場投入と生産拡大を推進

今回のシリーズA資金調達により、同社は研究開発中心の段階から商用展開と量産フェーズへの移行を加速させる。今後は基盤モデルを組み込んだロボットを実際の顧客現場へ投入し、導入ごとにモデルを改善することで、研究成果を確実に商用化へ結びつけていく方針だ。

さらに「汎化と性能の両立」を重視し、追加データや再学習を必要としない“箱から出してすぐ使える”ロボットの提供を進め、スケーラブルな展開を目指している。

共同創業者兼CEOの Lindon Gao 氏は、公式ブログで次のように語っている。
「AIのブレークスルー、ハードウェアの進歩、そして現実の労働課題が重なり、かつてない機会が生まれています。強力な基盤モデルこそがスケール可能な展開の鍵であり、私たちのモデルは顧客導入ごとに進化し、追加データなしでもすぐに動作します。」

さらに同氏は「Physical AGIには汎化と性能の両立が不可欠であり、汎用モデルだけでは商用化できず、特化モデルだけではスケールできない」と強調。今後は標準化と量産体制を武器に、物理世界における汎用人工知能の実現を目指す姿勢を示した。

国際ロボット連盟も2025年の主要トレンドとして「フィジカル型AI」を掲げており、ロボットに知能を持たせる流れは加速している。その中でDyna Roboticsの基盤モデル戦略は、Physical AGI 実現に向けた象徴的な挑戦として業界の注目を集めている。




参考文献:
※1:Dyna Robotics Closes $120M Series A: How We Think About Scaling Robotic Foundation Models(リンク

※2:同社公式HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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