米AIスタートアップのChai DiscoveryがシリーズAで103億円を資金調達。感染症・がんに対する抗体を設計するモデル開発

抗体の開発を目的とするAIスタートアップ、Chai Discoveryは2025年8月6日、シリーズA資金調達ラウンドでの$70m(約103億円)の確保を発表した。
同社は2024年、設立。AI創薬企業のAbsciに在籍したJoshua Meier CEOとMatthew McPartlon氏、StripeのエンジニアだったJack Dent氏、Jacques Boitreaud氏が共同創業者となっている。本社は、サンフランシスコに置く。
抗原とエピトープを入力すれば抗体の設計が可能なAIモデル
従来、創薬は多くの時間と費用がかかる分野だった。これが、マテリアルインフォマティクス、バイオインフォマティクスによって改善されるようになっている。
バイオインフォマティクスも機械学習やディープラーニングによって行われるものだが、近年のAIの隆盛が創薬のスピードをさらに改善している。Chaiのようなスタートアップが生まれたことは、その象徴といえそうだ。
同社が開発した「Chai-2」という生成AIモデルは、抗体設計ヒット率が20パーセントを記録。従来、AIを使ってもヒット率は0.1パーセント程度だったため、「画期的な進歩」と同社はアピールする。また、Chai-2は標的抗原とエピトープ(抗原と抗体の結合部分)の情報のみ、入力すればよいという。
このAIによって、感染症やがんなどのための抗体がつくられることを、Chaiは目指している。
AnthropicのファンドとOpenAIが参加
シリーズAは、Anthropicとパートナーシップを組むMenlo Venturesが主導し、その両社が設立したファンド、Anthology Fundが参加。他、ベンチャーキャピタル(VC)をはじめとした新規投資家と、OpenAI、エンジェル投資家のLachy Groom氏(Stripe出身)などの既存投資家が応じた。
資金は、プラットフォームのさらなる開発に利用する。
ChaiのCEOであるMeier氏とAI研究者のMcPartlon氏のコメントを、取り上げたい。まず、Meier氏は次のようにコメントした。
「画期的な医薬品や治療法の開発は、費用のかかる試行錯誤によって阻まれ、あまりにも遅すぎる。Chaiは、この分野の可能性の限界を押し広げるために存在している。最先端のAIを応用し、生物学を科学から工学へと変革することで、画期的な発見だけでなく、設計による実現を目指す」
次は、McPartlon氏のコメントだ。
「Chai-2が登場する前は、膨大な量の鍵の中から錠前にぴったり合うものを探すような状態だった。今では、錠前の説明だけに基づいて、熟練の鍵職人がぴったりの形をした鍵を設計してくれる状況となっている。
ある企業は、ある問題に3年以上と500万ドル以上を費やしていた。しかしChai-2により、実験的に検証された解決策を2週間以内に見つけることができる」
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