遺伝子を活用した医薬品原料開発スタートアップ、AntheiaがシリーズCで80億円を調達。グローバルな医薬品不足に対応

米国の医薬品原料開発スタートアップのAntheiaは2025年6月3日、シリーズC資金調達ラウンドでの$56m(約80億円)の確保を発表した。
Antheiaは2015年、スタンフォード大学のChristina Smolke教授の研究室からスピンアウトする形で設立。共同創業者は、CEOを務めるSmolke氏とバイオ企業のAmyrisやLygosに在籍したKristy Hawkins最高戦略責任者(CSO)となっている。
2024年には当時のBlinken米国務長官が視察
米農務省によると、西洋医学で使われる医薬品の40パーセントは植物由来となっている。当然、植物を栽培しても年によっては不作となる場合があるし、生育には時間が必要だ。
また、世界の20億人が基本的な医薬品を利用できないというアクセスの問題、後述する有効医薬品成分(API)を製造する業者の8割近くが米国外に所在といった経済安全保障の問題もある。
さらに近年、日本国内で見られたメーカーの不正行為やサプライチェーンの混乱といった複合的要因による医薬品不足もあり、こうした突発的な事態は今後も起こることが想定できる。
そこでAntheiaが進めるのが、必須医薬品の生合成主要出発物質(KSM)とAPIを米国内で持続的に生産し、医薬品メーカーに供給するという取り組みだ。同社は、これら2つを次のようなプロセスでつくる。
まず、自然界の生物からゲノム情報を取得、バイオインフォマティクスを用いた酵素をコードする遺伝子を特定。また、開発チームが選択した酵母のDNAに医薬品用化合物をつくるための設計図を埋め込む。
これらを発酵させ、性能を評価。パイロット生産や本格生産が可能だと判断すれば、KSMとAPIの量産に移るという流れだ。
以上は、Antheiaのオフィシャルサイトの記述を分かりやすくなるようにしたが、それでも今一つ、掴みにくい。誤解を恐れず端的にいうと、天然の菌や酵母を元に遺伝子・ゲノム情報を整理。そうした情報から酵母に医薬品の原料生産で適切な設計図を埋め込み、発酵させるという流れといえるだろう。
なお、KSMも端的にいえば医薬品の原料となる中間材であり、APIは疾患などに効く成分となる。
2024年5月には、当時の米国務長官であるAntony J. Blinken氏がAntheiaを視察。政府レベルで医薬品供給や経済安全保障の側面からバイオテクノロジーのイノベーションに関心を持っていることがうかがえた。
Antheiaを訪問したBlinken米国務長官(当時。同社プレスリリースより)
資金の使途は新規プロダクトの発売
シリーズCは、シンガポールの経済開発庁や米国の投資会社などが主導した。資金は、実際に不足している、あるいは、不足の恐れのある必須医薬品のための、70種以上の生合成医薬品原料の新規発売に充てられる。
Smolke CEOは、次のようにコメントした。
「投資家、顧客、そして製造パートナーと協力し、世界をリードする生合成技術によって、重要な医薬品への広範なアクセスを実現できた。次世代医薬品というビジョンを共有するこれらのパートナーの皆様に深く感謝申し上げる。今回の資金調達により、今後さらに多くの業界初のマイルストーンを達成できることを、楽しみにしている」
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