ニュース記事

「完全型」モジュール炉開発の米Aalo AtomicsがシリーズBで148億円を資金調達。設立からわずか3年での臨界到達が目標

INDEX目次

モジュール型原子力発電を開発する米Aalo Atomicsは2025年8月20日、シリーズB資金調達ラウンドでの$100m(約148億円)の確保を発表した。

同社は、Y Combinatorの2017年冬季バッチ(プログラム)を修了したMatt Loszak CEOらによって、2023年設立。本社は、テキサス州オースティンに置く。

2026年の米独立記念日までの臨界到達を目指す

これまで、ATXでもさまざまな小型モジュール炉(SMR)を開発する企業を取り上げてきた。一方、AaloはSMRではなく、「完全モジュール型原子力発電所」「XMR」を開発、建設していると、自らを称している。

XMRの定義は明らかではないものの、同社はギガワットクラスの発電所を建設することを目指す。対して、SMRはモジュール1基の出力がおおむね300メガワットより低くなっている。

Aaloのウェブサイトを確認する限り、工場でモジュールをつくる点は他のSMR開発企業と変わらない。しかし、原子炉からの熱の取り出しには、液体ナトリウムを使う。これにより、同等の原子力発電と比べて、10倍のエネルギー生産が可能になるという。

また、SMRスタートアップは核燃料に炭素コーティングを施したTRISOを使うケースが、多く見られる。しかし、Aaloは液体ナトリウムと親和性の高い金属燃料を使うという違いもある。

参考記事:SMR開発のX-EnergyがシリーズC1で約761億円を調達。TRISO-X燃料製造施設の建設を推進

Aaloは2024年4月、オースティンに建設したモジュールの工場を公開した。工場の広さは約4200平方メートル。また、同じテキサス州内に用地を確保しており、ここで非核プロトタイプの建設を予定している。実験をするためのプロトタイプである。

2024年に公開されたAaloの工場(同社プレスキットより)

こうしたプロセスを経て、2026年7月4日までの臨界到達を目標にしている。設立が2023年ということを考えると、かなり駆け足の開発スケジュールといえよう。

資金を人材確保に利用するとともに、新たな幹部の入社も明かす

シリーズBは、プライベートエクイティー(PE)ファンドが主導。事業会社関連では、日立製作所のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるHitachi Ventures、米エネルギー企業のNRG Energy、米不動産企業のTishman Speyerが参加した。

資金は、人材確保に利用する。現在は60人の従業員数を、倍増させる予定だ。また、Aaloは「この数週間で」複数の新たな経営幹部が加わったとも明かし、SpaceXでFalcon 9の製造責任者だったBryson Gentile氏らの名を挙げている。

AaloのLoszak CEOは、次のようにコメントした。

「世界をリードするテクノロジー企業、そして州政府や連邦政府は、原子力エネルギーを未来のAIデータセンターの電力供給に不可欠な要素と見ている。テキサス州やアイダホ州といった先進的な州による最近の立法や、複数の(連邦政府の)大統領令からも、それは明らかだ。

モジュール型原子力発電所の大量生産という独自のアプローチと、安全性と拡張性へのコミットメントを組み合わせることで、当社はこの動きの最前線に立っており、差し迫った市場ニーズに記録的な速さで応える準備が整っている」




【世界のSMRの技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界のSMRの技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら