マイクロLEDを開発するMojo VisionがシリーズBで7,500万ドルを調達

米カリフォルニア州のマイクロLED開発企業Mojo Visionは、GaN-on-silicon技術を基盤に高輝度・低消費電力のマイクロLEDを製造し、ARグラスやAIデバイス向けディスプレイを開発している。量子ドット変換やマイクロレンズ構造を組み合わせ、高密度かつ高効率な発光を実現するプラットフォームの構築を進めている。
以前、弊社でも同社が米国FDAのBreakthrough Devices Program(BDP)認定を取得したことを紹介した。当時はAR機能を備えたスマートコンタクトレンズの開発で注目を集めていたが、その後開発はうまく行かず中止となった。この経験を通じて得た知見や品質設計の考え方を活かして、現在のマイクロLED事業へピボットした形となる。
2025年9月にシリーズBプライムラウンドで7,500万ドルを調達。主導はVanedge Capitalで、NEAやKhosla Venturesなども参加した。資金はAI応用向けマイクロLED製品の商用化と製造拡張に充てられ、年内に複数の新製品投入が予定されている。
次世代マイクロLEDパネルを開発
近年、ARグラスやAIアシストデバイスなど、情報を“視覚的に重ね合わせる”新しいユーザー体験への期待が高まっている。しかし現行のディスプレイ技術は、輝度・消費電力・サイズのバランスが悪く、視認性や快適性に限界がある。また、製造コストやエネルギー効率の面でも課題を抱えており、現実的に社会実装可能な軽量高性能ディスプレイはまだ実現していない。
同社は、エネルギー効率と表示性能を両立させるマイクロLEDプラットフォームを開発し、従来技術の限界を超える表示基盤の実現を目指す。表示素子を根本から再設計し、より持続可能で高性能なビジュアル体験を社会に提供しようとしている。
GaN-on-Siと量子ドットを融合した高効率マイクロLED技術
同社は、GaN-on-silicon 基板上に形成した青色マイクロLEDを基盤とし、量子ドットで赤と緑に変換、マイクロレンズアレイで光を制御するという多層構造のアプローチを取っている。この設計により、高輝度・高解像度を維持しながら、低消費電力化と小型化を両立。従来のディスプレイ技術で避けられなかった「輝度・サイズ・電力効率」のトレードオフを大幅に軽減している。
製造プロセスは300mmウェーハ対応の“wafers-in, wafers-out” と称するプラットフォームで構成され、CMOSプロセスとの親和性が高く、量産化に向けた拡張性を持つ。また、ディスプレイ用途だけでなく、AIサーバー内の光インターコネクトとしても応用可能な設計で、1ビットあたり1pJ未満の省電力通信と、100Tbps/mm²を超える高帯域密度を実現する可能性を備えている。
AI関連市場への展開を本格化
同社は、今回の資金調達を機にマイクロLED技術の商用化を加速させ、AI関連市場への展開を本格化する方針を示している。CEOのNikhil Balram氏は「当社はマイクロLEDをAI革新の基盤とする」と語り、AIグラスや光インターコネクトなど大規模応用分野の製品化を進める意向を明らかにした。
取締役のAchin Bhowmik氏(Starkey社 CTO)は、「マイクロLEDは世代に一度の破壊的半導体技術であり、AIの可能性を広げる」と述べ、同社の技術を業界転換点に位置づけた。Mojo Visionは製造規模の拡大と量産化体制の確立を通じ、AI時代の表示・通信基盤として成長を目指す。
参考文献:
※1:Mojo Vision Closes Series B Prime Funding Round With $75M to Expand AI Applications of its High-Performance Micro-LED Platform( リンク)
※2:同社公式HP(リンク)
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