農薬散布をAIで効率化するAgZenが1000万ドルの資金調達を完了
米AgZenは2026年3月、Series Bラウンドで1,000万ドルを調達した。DCVC Bioがリードし、Material ImpactやAstanor Ventures、Syngenta系VCなどが参加している。
MIT発の同社は、農薬散布時の液滴付着量をカメラとAIでリアルタイムに測定・最適化するシステム「RealCoverage」を展開。作物表面への付着状況を可視化し、圧力や速度などの散布条件を即時制御することで、農薬使用量の削減と収量維持の両立を実現する。導入は急速に進み、対象面積は前年比15倍の約100万エーカーに拡大、2026年には3大陸で200万エーカー超の契約が見込まれている。
MITの研究が、農薬散布の“見えないロス”を可視化
同社の出発点は、MITの研究室で10年以上続けられてきた液滴の挙動に関する基礎研究にある。葉に当たった農薬の液滴が、跳ねる・流れる・付着するといった動きを解析する中で、「多くの農薬が実際には作物に付着せず無駄になっている」という課題を明らかにした。
創業者には、この研究を主導したMIT教授Kripa Varanasiと、液滴挙動を専門とする研究者Vishnu Jayaprakashが参画。特に後者は葉の上での液滴の振る舞いを博士研究として扱っており、同社は単なるAI企業ではなく、物理学に基づくディープテック企業である。
こうした研究を背景に、農薬散布は経験則に頼る工程から、データに基づいて最適化できる領域へと変わり始めている。
散布をリアルタイムで最適化する制御技術
AgZenの中核は、農薬散布をリアルタイムで最適化する「RealCoverage」にある。カメラとAIを用いて、作物表面にどれだけ液滴が付着しているかを走行中に測定し、その結果に基づいて散布条件を即時に調整する。
具体的には、液滴サイズや分布を解析しながら、圧力や速度、ノズル設定、ブーム高さといったパラメータを動的に最適化することで、過剰散布や付着不足を防ぐ。従来は事後的にも把握できなかった「付着量」という指標をリアルタイムで取得することで、散布そのものを制御対象へと変えている。
技術的な特徴は、「観測→判断→制御」を一体化した点にある。単なるモニタリングではなく、その場で最適化まで完結するフィードバックループを構築しており、農業機械をセンサー付きの制御システムへと進化させている。この構造により、農薬使用量の削減と収量維持を同時に実現しつつ、現場で即座に効果が確認できる仕組みとなっている。
農薬は「付着量」で評価される時代へ
同社は今回の調達を受けて展開を加速し、導入拡大を見込む。すでに需要は想定を上回っており、2026年分の生産枠も埋まっている。
CEOのVishnu Jayaprakashは「生産者や業界パートナーからの強い需要により、想定以上のスピードで導入が進んでいる」と述べ、農家にとどまらず産業全体での広がりを示唆する。また、会長のKripa Varanasiは「当社の技術は農業の効率と持続可能性を大規模に向上させる可能性がある」とコメントしている。
今後は付着データの蓄積を通じ、「散布量」ではなく「付着量」を基準とした意思決定が広がり、農薬や機器設計にも影響を及ぼすと考えられる。
参考文献:
※1:同社HP( リンク)
※2:AgZen Secures $10 Million Series B to Fuel Rapid Growth After Accelerated Adoption by Growers & Industry Partners( リンク)
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