長距離ハイブリッドVTOLを開発するXTIと航空産業のXeriantが合弁事業を発表
長距離の商用ハイブリッドVTOLを開発しているXTI Aircraft Companyは、航空産業での投資や事業を行う持ち株会社のXeriant, Incと、正式な合弁事業の契約を締結したことを発表した。合弁事業により、XTIが開発するハイブリッド電気固定翼TriFan600の実用化を目指す。
長距離ハイブリッドVTOLを開発するXTI
XTIは米国コロラド州に拠点を構えるベンチャー企業で、ハイブリッドVTOLを開発している。この機体は、他の空飛ぶ車のプレーヤーが開発しているようなeVTOLではなく、エンジンと電気駆動のハイブリッド式となっている。
同社の機体の特徴は「長距離セグメント」だ。同社が目指しているのは航続距離1,200kmという超長距離であり、これはウォール街のヘリポートからシカゴのダウンタウンのヘリポートまで移動することができ、近郊の大都市を結ぶ導線の実用化を狙っていることになる。
現在の100%電気駆動のeVTOLではバッテリーの制約から、長距離eVTOLでも200~300kmの飛行範囲となっている。Joby AviationやLiliumが狙う輸送距離がこのセグメントだ。
XTIが開発しているTriFan600という機体は、Webサイト上ではパイロット+乗客5人の合計6人乗りとされているが、今回の最新の発表では最大9人まで輸送することが可能であるという。3つのダクトファンにより垂直ホバーし、2つの翼ファンが前方に回転して、巡航速度飛行へとシームレスに移行する。
「私たちはエンジンと直列にバッテリーを使用して、いわゆるシリーズハイブリッドシステムを提供しています」と同社CEOは述べている。さらに現在はガソリンエンジンとのハイブリッド電気駆動であるが、将来的には100%電気の電池または水素燃料電池への移行を指向している。なお、現行の推進システムは、電気モーターと繋がる発電機に電力を供給するGE製の触媒エンジンで構成されており、垂直モードでは補助揚力を付加し、飛行中に再充電できる3つのバッテリーも含まれる。
VTOLも可能であるし、滑走路がある場合はSTOL(短い離着陸)も可能である。VTOLよりもSTOLの方が航続距離は伸び、STOLの場合には2,200km(ニューヨークからダラス)の飛行が可能と主張している。
さらに、同社はハイブリッド式を採用しているため、バッテリー充電時間の制約もクリアすることができるとしている。エアタクシーを商用化して収益を生みだすには、機体の稼働率がポイントとなる。ビジネスとして成立させるために、充電時間を短くし、1機体におけるフライト(輸送する人)の数をできるだけ増やす必要がある。ハイブリッドであるため、必ずしも満充電まで待つ必要はなく、電気とガソリンエンジンを併用することで、バッテリーのスペック制約に捉われずに、比較的短期で稼働率の高い空中輸送を実現するつもりだ。
航空宇宙産業を支援するXeriant
今回、XTIの技術に注目をして合弁事業を担うことになったXeriantも非常にユニークな企業だ。同社は航空宇宙産業を支援するために、投資や合弁事業を行う持ち株会社となっている。
現在、航空機体や無人航空機(UAS:UNMANNED AERIAL SYSTEMS)、アーバンエアモビリティや、機体の推進システム、航空宇宙産業で利用する先端材料やAI技術へ幅広く投資をしている。
今回の両社による合意の一部は、XeriantがXTIに1,000万ドルを投資することとなっており、今後合弁事業を通じて機体の開発で支援を受けていく。
2024年までに認証が完了する見込み
同社によると、この機体は現在利用可能なFAA規制に基づいて認証を行う予定であり、新しい滑走路は不要で、現行存在する滑走路やヘリポートを活用することができるという。
TriFan600は2022年に最初のテスト飛行を行い、2024年までに認証が期待されると見込まれている。
XTIのCEOのLaBelle氏によると、1機体650万ドルで販売されるTriFan600には、すでに202件の予約注文があり、40機が確定発注されている。将来の売上高は2億6000万ドルになることが見込るという。
同社HPはこちら
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