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ステラレーター型核融合発電所を開発するType One Energyが2億ドル調達

米テネシー州のType One Energyは、高温超電導磁石と計算物理を使い、複雑にねじれた磁場で高温プラズマを閉じ込めるステラレーター型核融合発電所を開発する。2019年設立で、核融合反応を連続運転可能な発電設備へ転換することを目指す。

同社は2026年10月6日、シリーズBで2億ドルを調達した。Breakthrough Energy VenturesとClutterbuck Capitalが共同主導し、Siemens Energy Venturesなどが参加した。資金は技術開発と、テネシー州で進めるProject Infinityの設計・建設に充てる。

物理実証から発電所建設へ移るステラレーター開発

同社の特徴は、核融合反応の研究だけでなく、発電所の建設、許認可、製造、運転を並行して進める点である。Project Infinityでは、Tennessee Valley Authority(TVA)のBull Run石炭火力発電所跡地に、実証設備Infinity Oneと商用機Infinity Twoを段階的に導入する。

Infinity Oneは非平面型高温超電導磁石や組立・保守方法を検証し、2029年の立ち上げを計画する。Infinity Twoは核融合出力800MW、送電端出力400MWeを目標とする。テネシー州は2026年8月、Infinity Oneに核融合施設向けの放射性副生成物取扱ライセンスを発給したが、商用発電所全体の完成や性能を認定するものではない。

日本では、日本ゼオンが2024年にZeon Venturesを通じて同社へ出資し、素材の提供や新規開発で支援する方針を示した。今回のシリーズBへの参加は公表されていない。当社メディアでも以前、同じ方式を採用するProxima Fusionの資金調達を取り上げた。Type One Energyは米国の電力会社と行政を早期に組み込んだ点で異なる。

三次元磁場でプラズマ電流に頼らず閉じ込める技術

核融合では、重水素と三重水素を高温のプラズマ状態にし、原子核同士を融合させる。反応で生じる中性子のエネルギーを熱として回収し、発電へ利用する構想である。課題は、超高温のプラズマを炉壁に触れさせず、十分な密度と時間で安定して閉じ込めることである。

ステラレーターは、立体的に曲がった外部コイルでねじれた磁場をつくり、プラズマを閉じ込める。トカマクのような大きなプラズマ電流を維持する必要がなく、電流の急変に伴う不安定現象を抑え、定常運転へ移行しやすい。一方、コイル形状が複雑で製造が難しいため、同社はスーパーコンピューターによる磁場最適化と、非平面型の高温超電導磁石を組み合わせる。

Infinity Twoの設計については、プラズマの安定性、核融合で生じるアルファ粒子の閉じ込め、熱・粒子の排出、三重水素を生産するブランケットまで、複数の査読論文が公表されている。これらは設計の物理的整合性を示すものであり、発電実績ではない。今後は複雑な磁石を要求精度で量産し、燃料循環や保守を含む発電設備として成立させる必要がある。

2029年の工学実証と2030年代半ばの発電開始が焦点

調達資金により、同社はInfinity Oneの建設とInfinity Twoの設計を進める。CEOのChristofer Mowry氏は、今回の資金によりステラレーター技術とProject Infinityの設計へ集中し、経験を持つ産業パートナーと初号商用機を届けると述べた。Breakthrough Energy VenturesのCarmichael Roberts氏も、核融合は「発見」から「導入」が課題となる段階へ近づいているとの見方を示した。

計画ではInfinity Oneを2029年に立ち上げ、Infinity Twoによる発電を2030年代半ば以降に目指す。今後の評価点は、実証設備で磁石、プラズマ制御、保守方法を統合して検証できるか、さらに400MWe級の設計を建設費と稼働率を含む商用条件へ落とし込めるかである。


参考文献:

※1:Type One Energyによる2億ドルのシリーズB調達発表(リンク)
※2:Type One Energyによるステラレーター技術の説明(リンク)
※3:Type One Energyが公表している査読論文の一覧(リンク)
※4:テネシー州による核融合施設向けライセンスの発給発表(リンク)
※5:日本ゼオンによるType One Energyへの出資発表(リンク)
※6:当社メディアによるProxima Fusionの資金調達記事(リンク)


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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