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中性原子方式の量子コンピュータを開発するOratomicが4.75億ドルを調達

米Oratomicは2026年10月8日、シリーズBで4億7,500万ドルを調達した。評価額は54億ドルとなり、3月の設立以降の累計調達額は7億7,500万ドルに達した。ARCH Venture Partners、Spark Capital、Khosla Venturesなど6社が共同で主導した。

同社は、レーザーで配列や位置を変えられる中性原子と量子誤り訂正を組み合わせ、計算途中の誤りを抑えながら大規模な処理を続けられる量子コンピュータを開発する。資金は研究・エンジニアリング人材、実験設備、システム開発の拡充に充てる。

数百万から1万へ、誤り訂正に必要な量子ビット数の圧縮

量子コンピュータの実用化を阻むのは、量子状態が外乱に弱く、計算中に誤りが蓄積する点である。誤り訂正では、複数の物理量子ビットに情報を分散して1つの論理量子ビットを構成する。ただし、従来は有用な計算に数十万〜数百万の物理量子ビットが必要になるとの見積もりもあり、装置規模と制御の複雑さが大きな壁だった。

Oratomicとカリフォルニア工科大学の研究チームは、中性原子を計算中に移動できる特性と、少ない冗長度で情報を守る高符号化率の誤り訂正符号を組み合わせ、暗号解読に関係するShorのアルゴリズムを約1万個の原子量子ビットで実行し得る設計を示した。これは完成機の性能ではなく、誤り率や制御精度など一定の条件を置いた資源見積もりである。

当社メディアでも以前、量子コンピュータの6方式を整理し、中性原子方式による48論理量子ビットの実証を紹介した。Oratomicは、この研究系譜を大規模な誤り訂正型システムへ進める立場にある。現在の焦点は量子ビット数そのものより、物理量子ビットから安定した論理量子ビットをどれだけ効率よく作れるかにある。

光ピンセットで原子を運び、必要な量子ビット同士を接続する技術

中性原子方式では、ルビジウムなどの原子をレーザー冷却し、集光した光が作る「光ピンセット」で一個ずつ捕捉する。原子内部の2つのエネルギー状態を0と1に対応させ、量子ビットとして扱う。原子は同じ元素なら性質のばらつきが小さく、半導体回路のように個体ごとの製造差が生じにくい。

計算時には、原子の外側の電子を大きな軌道へ励起するリュードベリ状態を利用する。励起した原子同士は強く相互作用するため、量子ゲートを実行できる。さらにレーザーの位置を変えて原子を移動させれば、離れた量子ビット同士も必要に応じて隣接させられる。固定配線の装置で接続先を順に入れ替える操作を減らし、誤り訂正に必要な複雑な接続を組みやすい。

論理量子ビットでは、複数の原子に同じ情報を分散し、一部に誤りが起きても全体から正しい状態を推定する。創業チームが参加したNature論文では、最大280個の物理量子ビットを使い、原子の保管、量子ゲート、読み出しを別領域で行う構成が示された。Oratomicは光学系を手がけるMonarch Quantumとも連携し、この原理を数万個規模へ広げる計画である。

2030年までの実機構築と1万量子ビット設計の検証

CEOのDolev Bluvstein氏は、研究の進展によって商用量子計算は遠いという創業メンバーの認識が変わり、中性原子、誤り訂正、光学などの専門家を集めたと説明する。同社は2030年までに実用規模の誤り訂正型システムを構築する目標を掲げている。

出資したIndex VenturesのMartin Mignot氏は、原子を計算中に動かせる点と高符号化率の誤り訂正が必要量を大きく減らす可能性を評価した。ただし、1万量子ビット級の装置、制御光学、読み出し、誤り訂正を一体で動かす実機はまだない。今回の資金で、論文上の設計を製造可能なシステムへ移せるかが次の評価軸となる。


参考文献:

※1:Oratomicによる累計7億7,500万ドルの資金調達発表(リンク)

※2:Oratomicの4億7,500万ドルのシリーズBと評価額に関する取引資料(リンク)

※3:Oratomicの設立、研究計画、CEOコメント(リンク)

※4:再構成可能な中性原子配列による論理量子プロセッサの実証論文(リンク)

※5:1万個の再構成可能な原子量子ビットでShorのアルゴリズムを実行する設計研究(リンク)


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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