レアアースを使わないモーター開発の米Coniferがシードラウンドで29億円を調達。量産化が視野に

レアアース(希土類)を使用しない電気モーターを開発する米Coniferは2025年4月14日、シードラウンドでの$20m(約29億円)の確保を発表した。
Coniferは2022年、Appleなどでエンジニアを務めたYateendra Deshpande氏とGoogleなどでエンジニアを務めたAnkit Somani氏によって設立。シリコンバレーに本社を置く。
アキシャルフラックスモーターを採用
電気自動車(EV)などの動力源となる高性能なモーターをつくるには、強力な磁性を必要とするため、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)といったレアアースを利用する。しかし、レアアースは産出国が偏在しているため、地政学や経済安全保障の視点に立つと、必ずしも安定的に供給されるとは言い切れない。
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そこで、自動車OEMの所在する国を中心に、レアアースの代替となる材料やレアアース不使用・少量でモーターなどをつくれる技術の開発が進められており、Coniferもその1社だ。
Coniferの場合、モーターの回転軸と平行方向に磁束がつくられるアキシャルフラックスモーターを採用。一般的なフェライト磁石を使いながらも、ネオジム鉄ボロン(NeFdB)磁石の2倍の出力密度を有するとアピールする。ネオジムを使った場合は、出力密度をさらに倍にできるという。
今のところこのモーターが搭載可能なのは、スクーターや三輪自動車などの小型モビリティ、芝刈り機などの機械、ファンやポンプとなっている。25馬力以下のモーターであり、プロダクトの価値を高めていくためにはパワーアップが必要になりそうだ。
今回がシードラウンドということもあるためか、設立から資金調達に至るまでのその他の動向は特に見られない。
資金を生産ラインに活用
シードラウンドには、多数のディープテックに強みを持つベンチャーキャピタル(VC)が応じた。また、その中の1社であるTrue VenturesのRohit Sharma氏が取締役に就任することも、発表した。
資金の使途は、生産ラインの確立だ。二輪車、小型四輪車、芝刈り機、トラクターなどといった小型モビリティーにギア付きインホイールパワートレイン、および、定置型アプリケーション(前述のファン、ポンプが該当すると見られる)のための生産ラインとなる。
Coniferが発表した写真。詳細な説明はないものの、こちらがギア付きインホイールパワートレインと見られる(同社プレスリリースより)
共同創業者のSomani氏は、「お客様にとって、航続距離の延長、仕様への適合、そしてコスト効率を兼ね備えた理想的なパワートレインを手に入れることは、困難だ。また、複数のベンダーや信頼性の低いサプライチェーンの管理に追われることも、避けたいと考えているだろう」とした上で、そのために「私たちの使命は、電動化と自動化を大規模かつ実用的なものにすることだ」と述べた。
同じく共同創業者のDeshpande氏も、「単一の生産ラインで25馬力以下のさまざまなサイズのモーターを製造するとともに、主要な巻き取り工程の製造コストを90%以上削減できる。当社のモジュラーインバーター、ギアボックス、そして柔軟なソフトウエアレイヤーとの統合により、お客様のご要望をコスト効率よく迅速に実現できる」とアピールした。
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